書評:ビルギット・ニルソン オペラに捧げた生涯 (春秋社)
2008年11月23日
★★★★★
爆発のおもしろさ。ビルギット・ニルソン(1918-2005)は私はもちろん、ライブで聞いたことはないのだが、ワーグナーを得意とするソプラノ歌手として名前を全世界に轟かせたスウェーデンのおばちゃんである。どこからどう見てもおばちゃんと形容するのがふさわしい方である。なぜおばちゃんなのか、ま、それ以上の説明は許して欲しい。事情あって割愛させて欲しい。太っている、なんてこと、大きな声では言えない。奇妙なジョークのセンスを持った人、とかいう誰かのコメント(レヴァインだったかも?)を覚えていた事もあって、この本は面白いかもしれないと興味津々で読み始めたところが大当たりであった。
このおばちゃんは怒髪天を衝くほどの声量を生かしたモーレツ歌唱でも知られているのだが、この自伝もまことにモーレツの極み。もうなんつーか、はは、おもろ、なんていうもんではない。激烈に、際限なく、面白い。ギハー!つって布団に倒れ込んで、もう一回読み直してギハー!っつってまた倒れるぐらいおもろい。下がって行って助走をつけ、ぐっと飛び上がり、8段の高さの跳び箱で台上前転を連続で5,6回したところでまったく間に合わなさそうな興奮があなたにも持続することは間違いない。この興奮、誰かおさめて!助けて!
読みやすさのバチグンさはもとより、本当かウソか分からぬが奇妙に納得させられるエピソードの数々。むしろウソつけ!と叫びたくなるへんてこジョークが山盛り。そしてこれは翻訳者の市原和子氏も後書きで触れておられるが、他人の中傷、罵倒、呪詛、そのようなものがなく、読んでいて爽快。一例として、お互い口も聞かなくなったカラヤンに対してもその天下一品の腕前はしっかりと認めている記述が秀逸。また自分の失敗をいくつかを正直に記しているその感覚も心地よい。ニルソンさんのような偉大な歌手が舞台上でまさか・・・(略)。
全社員(って誰?)必読の書物であることの断言を憚らなくてよいと私は信ずる。この本の値段の高さ(¥3,360)にまず驚き、そして内容のおもしろさに再度驚け!


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